ANDY WARHOL、SMAP、POP

2003年6月25日
 朝、新聞をなんとなしに捲ると「MIJ」と大きなフォントに小さなフォントのボディコピーの赤い文が目に入ってきた。大学入試以来の錆びついた英語力で脳内に流しこむ。1行でまとめると「がんばろう日本人by SMAP」ということらしい。コーヒーを飲む方に気を移しながら、ふーんと思ったが3秒後ぐらいには次の記事に興味が動いていた。梅雨空の薄灰色の空のような経済や社会情勢をに満たされた40面分の文を見ると、どうもリアリティあるような、ないような不思議な気分になった。誰かが言っていたが、オーストラリアやNZは年率5%程の成長率があるらしい。座敷童子のように景気の神様が他の国に出ていってしまったから、景気が悪いのかななんて馬鹿なことを考えた。
 渋谷のPARCO MUSEUMのANDY WARHOL展に足を運ぶ。前日に食べた、鬼子母神「梅もと」のつけ麺「宇宙盛」のためお腹が24時間たっても張ったままで体形が内部圧迫で崩れる寸前であるため、本当に新宿から歩いて行った。(ちなみにここの店は「銀河盛」(7人前)、「ビックバーン盛」(10人前)と続く。値段は全て一緒。私が食べた「宇宙盛」は5人前。)1時間程の道のりの中でSMAPの看板広告が「Drink Smap」の時程ではないが大量に設置されていた。息切れしながらPARCO part3の前に着くとイベギャルのおねえさんが小さなステッカーを配っていて、それは新聞と同じSMAPの広告のシールで裏に日本語訳が書いてある。

MIJ
世界最高峰のサッカーリーグでファンを魅了する日本人プレイヤーがいます。何人もの日本人プレイヤーがメジャーリーグを沸かせています。最も有名なファッションブランドが日本人アーティストとコラボレーションしました。他にも映画、音楽、建築…これだけ日本人が同時期に世界で活躍した時代が今まであったでしょうか?今、日本は不況の真っ只中でちょっと元気がないですが、本当は歴史的にスゴイ時代です。この時代に日本人として生きていることって、ちょっといい気分じゃありませんか?世界でがんばっている彼らのNEWSが僕たちを勇気づけ、日本人でいることがちょっと誇らしく思えてきます。僕たちもみなさんと一緒に胸をはって歩いていくつもりです。がんばりましょう!合い言葉はMADE IN JAPAN=[MIJ]です。SMAP

 スペイン坂の前のイベントスペースではTシャツにこの広告を手刷りするイベントをやっていて、ワイドショーの取材班と目される人たちが行列の脇を動いていた。展覧会見て、残ってたらやろうかななんて会場に向かう。直系のアートの遺伝子であるGROOVISIONSのディレクションの空間はどこかで見た記憶のする作品で一杯だった。存在するものをそっくりそのまま引用し、イメージを反復する。シルクスクリーンの作品達は極めて機械的かつ複製可能なもので、ある意味、さっき通りがかったSMAPの発売記念イベントのTシャツの転写と同じ。ウォーホルは2万5千ドルのギャラで、肖像画の依頼を受けるとポラロイドで依頼者の顔写真を撮り、お客に好きなものを選んでもらって、シルクスクリーンに転写して出来上がらせる。その違いで大きな違い。「芸術」を消去しようとして「芸術」になったものと、「芸術」になりたいけど「芸術」になれないものの断崖。中学生の頃、コピーで拡大縮小をした切り絵で美術の課題を出した時のこと(実家の引っ越しでその当時のものが出てきたけど、顔から火がでるというか即時ゴミ捨て場行き)を思い出して、そういうのって簡単そうで一番難しいんだよなあなんて考えた。

 外へ出ると既に整理券の配付は終了していて、赤いインクで一枚一枚刷られたTシャツがどんどん作られていた。卵を加えるだけで蟹玉ができる加工食品のように、完成品を配るのではなく、刷るという一手間を街で行うことにより、CMではなくNEWSとしてメディアに流す。祭りの精神というか、参加して共同作業として話題をつくる広告が流行っているけど、媒体費がないから、話題性を作るためにイロイロやっているという事情を聞きかじっていても、空気を感じられるものは好きだ。この広告のコピー自体は同意しかねるし、あんまり好きではないけど、これで少しは明るいNEWSができればいいんだと思って、私は駅に消えた。

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